Vol.1

 瀬戸内寂聴尼の寺として知られる岩手県二戸市浄法寺町の「天台寺」。東北最古の寺と言われ、その成り立ちは謎に包まれています。寺伝によれば、奈良時代の高僧・行基によって神亀5年(728年)開山されたとされています。その真相はともかくとして、古くから人々の信仰を集めた場所であることは間違いありません。この天台寺が、歴史に確実に登場するのは南北朝時代です。正平8年に作られた鰐口に「天台寺」という確かな証拠を持って登場するのです。正平8年は西暦1363年にあたります。 
 浄法寺漆器は、謎に包まれた東北最古の名刹天台寺の僧侶が自家製の什器を造ったことに始まると伝えられております。古くから「生漆」「浄法寺漆器」の産地として知られ、室町期には確固たる地位を築いたのが浄法寺塗です。古式浄法寺の最大の特徴は自由奔放な絵付けにあります。その当時の浄法寺塗は、骨董の世界では「浄法寺もの」として高い評価を受けています。  
 (下記の画像は江戸期の浄法寺塗)


柊絵四段重


菊絵五段重
 確固たる地位を築いた「浄法寺塗」でしたが、江戸期の南部藩は漆器製造を統制し他藩への自由な流通を禁止したために、浄法寺塗最大の特徴である自由奔放な絵付けは徐々に廃れて行きました。藩主などへ献上する「箔椀」などの高級品か庶民向けの漆器に活路を見いだしたのです。
 第二次大戦後、生活様式の変化とともにプラスチック製品が普及し、「浄法寺塗」は一時期途絶えそうになりましたが、地元の人々の努力により現在でも人々の暮らしの中に生き続けています。


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