カシオペアの方言 「タカラモノ」

私の住んでいる岩手県北部(青森県南も同様)では、いたずらをした子供をを叱るときになどに「このタカラモノ」と言って叱る。

ニュアンスとしては、何も知らない者、どうしようもない者というような感じだ。
私は「子供は国の宝」という言葉から連想して、「タカラモノ」は「宝者」が語源だと思っていた。
子供の将来を宝に例えて、いたずらをした子供達も磨けば光るというような意味に使っていると考えていたのである。

ところがである。秋田県の北部を旅行していたときのこと。
「このタグラダ」と言っておばあさんが子供を叱る場面を目撃した。
「あ〜、なるほど。タカラモノと同じような言葉なんだ」と思いながら、タカラモノがタグラダに変化したのかなと考えていた。



ある日、何かの本を読んでいたら「痴者」と書いてタクラダと読ませる文章に遭遇した。
「痴者」は字のごとく愚か者を意味する言葉である。
すぐに広辞苑を引いてみた。
すると「タクラダ」があったのである。
「田蔵田」と書いてあった。
それは中国のジャコウ鹿に似た獣で、狩の最中に自分から飛び出して来て狩の対象とされることから、愚か者を意味すると書いてあった。

賢明な読者はもうお解りでしょう。
「タカラモノ」は「タクラダ」から来た言葉だったのである。
タクラダ>タクラダモノ>タカラモノのように変化したと考えられる。

方言は奥が深い。

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方言の日本地図-ことばの旅 (講談社+α新書) 北天の魁―安部貞任伝